公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

それらしい態度

 サガード様がラーデイン公爵家を訪ねて来たと聞いて、お母様やお兄様はとても驚いていた。流石に、王子様が来ると二人も動揺するらしい。
 しかし、イルフェアお姉様はまったく驚いていなかった。それはきっと、王城でのやり取りを知っているからなのだろう。
 そんな家族の反応を見てから、私は客室にやって来た。ここで、サガード様とお茶ということになったのである。

「やっぱり、突然来るべきじゃなかったよな……今度は、絶対に連絡するからさ」
「ええ、そうしてくれると助かります」

 サガード様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 流石に、お母様やお兄様を何度も焦らせたくはない。今度からは、事前に連絡をしてもらった方がいいだろう。

「でも、思い立ったからといって、よくここまで来ましたね。それなりに時間がかかるというのに……」
「うん? ああ、それは丁度、この辺りに用事があったからで……」
「用事? 何かあったのですか?」
「ああ、そうなんだ」

 どうやら、サガード様はわざわざ私に会いに来たという訳ではないようだ。
 考えてみれば、それは当然である。いくら友達がいなかったからといって、私に会うためだけにここまで来るはずはない。

「この辺りで、配給があったんだ」
「配給ですか? どうして、サガード様がそこに?」
「俺の家庭教師の先生が、今後のために行った方がいいと言って来たんだ。初めはどういう意味かよくわからなかったけど、実際にその光景を見て、先生がどういう意図だったかは、なんとなくわかったよ」
「そうですか……」

 サガード様の言葉に、私は少し考える。その話が、どこかで聞いたことがあるものだったからだ。
 確か、クレーナさんはウルスドお兄様に配給の様子を見てもらうと言っていた。平民のことを彼にも学んでもらいたい。そんな考えがあるそうだ。
 その思想は、サガード様の家庭教師と似ている。まさか、クレーナさんもその人から学んだのだろうか。
 家庭教師が言っているのだから、そういうこともあるのかもしれない。もっとも、単に偶然であるという可能性も捨てきれないが。

「それで、ラーデイン公爵家の近くだったからさ。少し寄ってみようかと思ったんだ。ほら、あれから特に何もなかっただろう?」
「ええ、そうですね……」
「……あのさ。なんというか、固くないか?」
「え?」
「その……王子だからといって、気は遣わないでくれないか? ほら、俺達は、友達なんだし……」

 そこで、サガード様はそんな指摘をしてきた。
 確かに、考えてみれば、少し固いかもしれない。ずっと敬語だし、距離感も感じるだろう。
 私は、彼と友達であると割り切った。しかし、これでは駄目だろう。もっと、友達らしい接し方があるはずだ。

「うん、わかった。それじゃあ、これでいいかな?」
「……ああ、そういう感じだ」

 私が少し態度を変えると、サガード様は笑顔を見せてきた。
 こうして、私はサガード様との接し方を変えることになったのだった。
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