熱情滾るCEOから一途に執愛されています~大嫌いな御曹司が極上旦那様になりました~
「わ、わ。私、初心者で!」
「大丈夫ですよ。すぐ慣れますから。赤ちゃん、今さっきミルクを飲んだばかりなので、次の授乳は一緒にチャレンジしましょうね」

看護師さんに言われ、頷きながらも、ふにゃふにゃの柔らかい命におどおど狼狽える。
こんなに柔らかくて頼りないのに、よく頑張ってお腹から出てきてくれたなあ。私も痛かったけど、この子はもっと大変な思いをして産まれてきてくれたんだ。そう思うと自然と涙がにじんできた。

「お母さんだよ。きみの」

大きな目が私をじっと見ている。私と同じ真っ黒い瞳。

「あっちがお父さん。おばあちゃんとおじいちゃんもいるよ。もうひとり、おじいちゃんもいるし、綺麗な叔母さんもいるんだ」

私は小さな小さな息子に話しかける。

「あらためて、これからよろしくね」

息子はいつまでも、透明感のある黒い眼で私を見つめている。
小さな唇がもぞもぞと動く。いとおしくて胸が苦しくなった。

ひとつの命を育み大人にするまでには、きっと多くのことがあるだろう。楽しいことも大変なこともあるだろう。
それを乗り越えていくのが家族。苦労も喜びも、私たちの糧になるに違いない。
成輔が私の隣で赤ちゃんを覗き込む。彼の目も潤んでいた。

「産まれてくれてありがとう」

優しい声で赤ちゃんに囁いて、成輔は私の肩を抱いた。私はにじんだ涙をぬぐうことなく、成輔の胸に頬を寄せた。
愛に満たされた瞬間だった。



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