妖帝と結ぶは最愛の契り
「きゃあっ」
「小夜っ⁉」

 倒れる小夜を心配する美鶴だったが、すぐに碧雲に捕まってしまう。
 首に腕を回され、顎の部分を乱暴に掴まれる。

「うぐっ」
「さあこれを飲め、堕胎薬としても使われているほおずきの根を煎じたものだ」

 頭を固定された状態の美鶴の口元に竹筒が近付けられた。

「確実に子が死ぬようにまじないも加えた。なに、通常であっても死産など珍しくはないのだ。気にすることでもなかろう?」

(なにを……勝手なことを!)

 あまりの言いように怒り以外の感情など吹き飛んだ。
 確かに流産も死産も珍しくはない。
 だが、だからこそ大事に産み育てるのだ。

(命を何だと思っているの!)

 美鶴は生まれて初めて、燃え上がるような怒りを感じた。
 でも、今はその怒りを声に出すわけにはいかない。

「そら、口を開け」
「ぐっ」

 口を開けたとたんにその堕胎薬を流し込まれてしまうだろう。
 グッと歯を食いしばり、唇が開かぬように力を込めた。
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