妖帝と結ぶは最愛の契り
 駆けつけるのが間に合わないと見て取って、迷わず力も使った。
 助けた娘はみすぼらしいなりをしていたが、可愛らしい顔立ちをしていたし平民にしては粗雑な雰囲気がない。
 すぐに娘――美鶴に興味を持った。

 詳しい話を聞いて、珍しい異能持ちという事もあり自分の妻にしようと即決したのはすでに美鶴に惹かれていたからだろう。
 頭を撫でただけで恥ずかし気な表情をする彼女を可愛らしいと思った。
 牛車の中で戯れのように触れ合ったときも、腕の中に納まる小さな体に愛しさが込み上がり切なげな思いを抑えられなかった。

 美鶴が戸惑っているのを理解してはいたが、愛しいと思う娘の存在を確かめたくて抱き締めた。
 そのまま口づけたくなったが、こんなところで取って食ったりしないと言ってしまった手前抱き締める以上のことをするわけにもいかない。
 内裏に着いたら、と言い聞かせなんとか自制したのだ。

 その後内裏に着いて一度別れるときも名残惜しく、これほど一人の娘に執着する自分に内心戸惑いを覚えていた。
 だが、沸き上がる思いは止めどなく……妻となる娘の存在をもっと近くに感じたかった。

 身だしなみを整え小綺麗にした美鶴は思っていたより美しく、その謙虚さに更なる愛おしさで胸が詰まった。
 引き寄せられるように肌に触れ、彼女のすべてを求めた。
 無垢な美鶴はただただ可愛らしかったし、守りたいと思ったのだ。

 だから、こうして会わずに過ごしている。
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