妖帝と結ぶは最愛の契り
異能の娘
 額に玉のような雫を生み出し、美鶴(みつる)は家の門前を掃除していた。
 今日は朝から暑く、小袖(こそで)が汚れないよう腰に巻き付けてある湯巻(ゆまき)すら外したくなってくる。

 ただでさえ風前の(ともしび)な気力を暑さに奪われていくようだった。

 美鶴の家は他の平民のものに比べて少々広いため、門前も少し広い。
 一般的な平民の家を小家(こいえ)と言うので、この家は大家(おおいえ)とでも呼べばいいのだろうか。

 この故妖国の首都・黎安京(れいあんきょう)整然(せいぜん)とした都だ。
 内裏(だいり)の近い奥には公家(くげ)の屋敷が立ち並び、華やかな風情を(かも)し出す。
 公家が住まう区画には帝のための庭園や寺院があり貴族たちの心を癒しているのだという。

 打って変わり、平民である人間は四行八門(しこうはちもん)と呼ばれる宅地で貴族が管理する小家に住む。
 貴族に仕える者であれば、主人の屋敷の周りに建てられた桟敷(さじき)に住む者もいるだろう。

 父の仕事も他国からの輸入品を管理する役人のお付きなため、主人である中級貴族の屋敷そばに家を与えられている。
 元々は他国の商人だったが、商品に詳しい者が必要だからと()われてこの国に来たのだとか。
 そのため他の平民とは違い大きな家を与えられている。
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