妖帝と結ぶは最愛の契り
 童ということもあり、とても可愛い。
 ふさふさの耳としっぽが触り心地が良さそうで美鶴はいつも触りたくてうずうずしてしまう。
 だが、あの二人が触らせてくれるとは思えない。

(少し、嫌われているみたいだから……)

 小夜の目がないときの会話が蘇る。


『私たち、あなた様を妖帝の妻とは認めておりませんから!』
『お仕事はちゃんといたしますが、私たちの本意ではないことは覚えておいて下さいまし!』

 内裏に来て初めて面と向かって悪意――というか、不満をぶつけられた。
 不満に思う者は多いだろうと思ってはいたが、久方ぶりに向けられる不平に目を瞬かせてしまう。
 驚きつつも『平民が妖帝の妻などやはり分不相応ですものね』と返すと違うと即答された。

『確かに平民が? と驚きはしましたが、それはどうでも良いのです』
『私たちが一番不満なのは小夜姉さまのことです!』
『小夜?』

 ぷりぷり怒る二人の話では、小夜は本来腰元などするような女性ではないというのだ。
 本来は私室を持てる高位の女官なのに、教育係とはいえ妖帝の妻の側に控えていなければならないなんて……と嘆いていた。

『想い人の妻の近くにいなければならないなんて、小夜姉さまがおかわいそう』
『え?』
『小夜姉さまは隠しておられますけれど、妖帝のことを愛情のこもった優しい眼差しで見ているところをよく見ますわ』
『小夜が……?』
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