君のため、最期の夏を私は生きる

序章

 202×年8月31日。
 東京の中心を走る電車の中で、28歳無職の男が次々と乗客をサバイバルナイフで刺すという凄惨な事件が起きました。
 彼の目的は、有名なテーマパークに行こうとしていた、とある高校生カップルでした。
 彼はそのカップルを執拗に追い回します。
 そしてついに、彼がカップルを追い詰めた時でした。
 彼が、カップルの男を刺そうとした瞬間、女が刺されました。
 そして次に、呆然とする彼にカップルの男がナイフを突き刺しました。
 カップルの男女は、そのまま息を引き取りました。
 彼はたった一言こう囁いてから自らの喉にナイフを突き立てました。

「どうして妹のお前が、俺を殺すんだ。俺には、お前だけだったのに……」

 こうして、この通り魔事件は被疑者死亡という形で、幕を閉じた……はずでした。
 これが、妹と呼ばれた私の記憶です。
 分かっています。
 兄がお前だけだったのに、と言った本当の意味を。
 神様。
 兄に命を奪われた私の哀れな最期の願いと思い、どうか聞き入れてください。
 このままでは、3人とも地獄逝きです。
 私以外の2人は、本来であれば天国に愛されたはずの人間です。
 私が、彼らを堕としたのです。
 だからお願いです。
 私に、時間をください。
 必ず正しい形にしてみせますから。
 地獄に逝くのは……私だけです。
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