姐さんって、呼ばないで
見える、優しさ

五月上旬。
高校生活にもやっと慣れて来た頃。
GWで日本中が活気あふれる中、小春の自宅に詠が遊びに来た。

「これ、お土産」
「わぁっ!おっきなイチゴ♪」
「昨日、日帰りでイチゴ狩りして来たから」
「えぇ~いいなぁ♪ありがと、詠ちゃん」

詠からイチゴの入った袋を受け取る。

「あまりん?……かおりん??」
「あっ、それ品種だよ。とちおとめとかあまおうとかあるでしょ。それと同じで、埼玉県のブランドイチゴ」
「へぇ~、隣県なのに初耳」
「だよね。私もまったく知らなかったよ」

かなり大粒のイチゴ。
甘酸っぱい香りが袋から溢れ出して来る。

「ごちそう様、あとで頂くね」

小春は冷蔵庫にイチゴを入れ、紅茶とケーキを用意する。
二階にある自分の部屋に詠を通し、GW明けの小テスト勉強をしながら女子会を開く。


小春たちが通う高校は都内でも有数の私立進学校。
総合学科の高校ということもあって、専門分野が細かく分かれていて単位制になっている。
文系、理系、外国語系、商業系、工業系、家庭科系、体育系、医療系など複雑に履修科目があり、それにより校舎が多く、教室移動が多い。

あっという間に一カ月が過ぎてしまったが、勉強について行けるかという心配よりも、小春には気になっていることがある。

「仁さんから連絡は?」
「……メールが来るくらいだよ」
「ちゃんと返信してんの?」
「……一応、返してはいるけど」

『今、何してる?』『風呂入ったか?』『今日何してた?』的なメールが送られてくる。
それに対して、『テレビ観てました』『さっき入りました』『両親の病院を手伝ってました』的に簡素に答えるだけ。

来るから送り返す程度で、小春からメッセージを送ったことはない。

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