姐さんって、呼ばないで
逢えない時間と、手作りのお守り

六月下旬から七月上旬に行われる期末考査。
一年の一学期は比較的点数も取りやすく、小春と詠は試験対策として小春の家で勉強することに。

仁ほどではないが、小春も元々成績がいい方。
幼い頃から仁に勉強を見て貰っていたお陰かもしれないが、勉強自体は嫌いじゃない。

「なるほどね~、だからこうなるのか…」

数学の練習問題を解いていた詠は、どうしても分からない箇所を小春に教わる。

「ジュースのおかわり取って来るね」
「ありがと~」

小春はキッチンへと飲み物を取りに行く。

ピコン。
ん?
メール?

ポケットからスマホを取り出すと、鉄さんからメールが送られて来た。

「珍しい。……何だろう」

送られて来たメールを開くと、『明日から数日、俺と兄貴、学校を休みます』とだけ送られて来た。
すかさず、理由を尋ねる返信を送ると。

ピコン。

「来た」

『会社の仕事がちょっと立て込んでて。学校には連絡入れておきます』
メールの言葉が鉄さんっぽくなくて、ほんの少しクスっと笑えた。

仕事、忙しいのか。
大丈夫かなぁ。

普段から夜遅くまで仕事をしていると鉄さんから聞いているから、少し気になってしまう。
昼は学校、夜は仕事。
休む間がなくて、大丈夫なのだろうか。

『分かりました。お仕事頑張って下さい。仁さんにも宜しくお伝え下さい』とだけ返しておく。

テストまでには落ち着くよね?

期末考査まで一週間。
試験勉強をしなくても、点数は取れると思うけれど。
それでもやっぱり心配になる。

記憶を失っているとはいえ、もう赤の他人ではない。
小春の中で、単なるクラスメイトということ以上に、気になる存在になっていた。

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