君に抱いた恋心を記憶の中にそっとしまって。

私をまっすぐ見て伝えてくれた言葉。


その言葉に涙を流した。そっと一筋の暖かい涙が頬を伝う。まさか、遥陽さんから気持ちを伝えてくれるなんて思わなかった。


自分のことを好きになってくれる人なんているはずもないと思っていた私。


だけど遥陽さんは違った。


ちゃんと私のことを見てくれて、こんな私のことを好きと言ってくれた。


その言葉を、ずっと心のどこかで待っていたのかもしれない。



「……私も、遥陽さんのことが好きです。私で良ければよろしくお願いします」



差し出された遥陽さんの手をぎゅっと握る。


こんなにも気持ちが溢れて幸せな時間はないと思った。好きな人が好きと言ってくれるこの幸せを、大切にしたいと思った。



「……ありがとう。初優ちゃん。好きって伝えてくれてありがとう。俺も好きだよ」



握った手をそっと引き寄せて私のことを遥陽さんが抱きしめた。暖かな温もりを感じながら遥陽さんの腕の中で幸せな涙を流した。
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