幸せな音
「大丈夫大丈夫、私がついてるからね。目を閉じて、深呼吸は丁寧にね」

 景に抱きしてもらうと不思議なくらい安心して落ち着く。

「そうそう、肩の力を抜いたら今度は胸もお腹も足も指先もね。いいよいいよ、その調子、血も肉も骨も水になって流れて、それでも残った本当のあなた。さあ、私の質問に答えて?」

「はい」

「優武さんの背格好は?」

「えっと、身長は165㎝、痩せすぎって程でもないけど細い方。インドア派だから肌は白かった」

「いい感じだよ、じゃあ髪は?」

「髪は黒。染めてなくて、くせ毛で、白髪は全然ないけど髪質は細い方で、ふふっ」

「えー、なになに?」

「いや、優武くんには聞かせられないなと思って。髪が細いから薄毛に見えるのすごく気にしてて」

 頼む、これ以上僕のもとから離れないでくれ! とか言いながら育毛剤吹きかけてたのがおもしろかった。別に優武の髪がどんなに薄くなっても気にしないし、可愛いと思うのだけど。

「なんでそんなに気にしてたんだろ? おしゃれな人だったのかな?」
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