完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話

3.借りは返さないと気持ちが悪いから

“そんなの、絶対嫌!”

 そう強く思った私は、万一にもそんな風に思われないように平然と装った。
 何より男性に負けた、なんて思いたくなかったのもある。

 後から考えればそもそも勝ち負けではなかったし、万が一があってからでは遅く自己防衛の意識が高いことは正しいのだと断言するが、少なくとも熱に浮かされた私はそう思ってしまい――


 
「久保さん、家、着きましたよ」
「ふぇっ?」


 そして本当に寝てしまったらしかった。

“危機意識!!”

 寝落ちする前は確かにそんなことを考えていたのに、実際のこの体たらくに思わず頭を抱えてしまう。
 
 まだ寝起きでかつ熱で意識がぼんやりしつつも周りを見回すと、そこは紛れもなく私の一人暮らしをしているマンションの前だった。

「本当に家に着いてる……」

 車から降りながら思わず溢した一人言。
 その言葉をすかさず拾ったのはもちろん水澄さんである。
 
 
「流石に病人……以前に同意のない相手に何かしたりしませんよ。しかも社用車ですし」
「え……、あ」
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