完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話

4.強い女でいたいから

 電話が鳴ったのは丁度定時を30分ほど過ぎたタイミングだった。

 登録していない番号だったが、心当たりがあったので慌てて通話ボタンを押すと、相手はやはり水澄さんで。


『夜分遅くに申し訳ありません。こちら久保美月さんの携帯番号でお間違いありませんでしょうか?』

 なんて、まるで取引先相手にかける最初の電話のような少し堅苦しい言い方に小さく笑う。

「はい、そうです。水澄さんですか」
『あ、良かった。番号いただいたので掛けさせて貰ったんですが、何かありましたか? もしかしてまだ体調が悪いです?』
「いいえ、お陰様でもう大丈夫です。お礼を言おうと思ったんですがいらっしゃらなかったので、番号を置かせて貰ったんですよ。コーヒーは私が飲みました」

 正直にそう伝えると、納得したのか電話の向こうから『あぁ』と声が聞こえた。

“コーヒーのこと、忘れてたのかしら”

 まるで今言われて思い出した、という反応に思わず怪訝な顔になる。
 もしかしたらあの時私が食い下がったから、適当に口にしただけだったのかもしれない。

 
「今仕事終わりですか? お時間があるようならお礼したいのですが」
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