完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
　何故担当箇所に一人しかいないのか、と人事部に進言してくれたのは水澄さんの上司である営業部の盛岡部長だったらしい。

“そのお陰で一応勤務時間のサボりは激減したのよね”

　ただ、チクチク言われる嫌味は量を増したのだが。


　いつもならそんな嫌味は聞き流し、さっさと着替えて更衣室に出るのだが。

「なんの話？」

“副社長は今出張中で今週は絡まれていないし、何もなかったはずだけど”

　言われた内容に思い当たることがなかったせいか、つい聞き返してしまっていた。
　そもそも言いがかりばかりの悪口に思い当たることも何もないのだが、今度は何がきっかけでどんな言いがかりを付けられているのか最低限把握はしておきたいと思ったのだが。

「水澄さんって愛想もよくて可愛いですもんね。黙ってたら十分イケメンですし？　顔が良ければ誰でもいいんですねぇ」
「……は？」

　突然出てきたその名前にぎょっとする。

“もしかしてあの嘘の恋人宣言が噂になってるの？”

　水澄さんが嘘を言ったのは盛岡部長だけだったし、まだ早朝でその話をした時周りに人はいなかったので聞かれてないとは思う。
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