完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話

9.ご一緒いかが?

 水澄さんと食事をしてからもう一週間以上がたっていた。

 受付に立っているお陰でたまにチラッと彼の姿を見かけることはあるが、先日言っていたコンペのためかいつも忙しそうに走っている。
 
 本当に付き合っている訳ではない私たちは業務が終わった後に連絡を取り合うこともなく、また大詰めだろう仕事に奔走している彼を呼び止めるなんてこともしなかったので、挨拶すら交わしていない始末。

 それでも目が合うと電話中でも会釈をしてくれるなど、そういう律儀なところを見ると温かい気持ちになるし、それと同時に少し寂しくも感じてしまうようになった、そんなある日。


“あぁ、そうだった。不快なのは同僚だけじゃなかったわ”

 そう改めて思い出した私の口から、はぁ、とため息が溢れた。
 
 表情だけは平静をなんとか装ったが、本音を言えば思い切り睨み付けてやりたいくらいである。

 それもそのはず、相手は。

「……副所長」
「折角出張から帰ったってのに、彼氏が出来たって本当なの?」

“それ聞くのもセクハラだと思うんだけど!”
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