完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
「ちょっと。まさか貴方それ本気で言ってるんじゃ」
「え?」
「二人っきりで! お祝いしたいなって誘ってるんですけどぉ!」

“直球!”

 同僚も水澄さんが本気でわかっていない可能性を察したのか、ハッキリと言葉にしたのだが。

「え? それこそなんでだろ。俺たち関係なくない?」
「なッ!」

 カァッと赤く染まった同僚の顔を見て私の溜飲が下がる。

 流石にそれ以上何も言えなかったのか、同僚が黙ったのを見て水澄さんも言葉を切った。
 
「じゃあ俺はそろそろ行きますね。仕事頑張ってください」
「えぇ」

 最後にそれだけ言った水澄さんはそのまま受付横のエレベーターに乗り込み、締まりつつあるエレベーターの扉の向こうで軽く手を振ってくれる。
 その仕草こそ、さっきの同僚以上にあざとく見えて。


“一生わからないと思ってわかりやすいぶりっ子にときめく男の心理、ちょっとわかっちゃったかも”

 なんて。


「……ほんっとムカつく」


 そんな同僚の呟きに気付かず、もう閉まってしまったエレベーターの扉を眺めながら私はそんなことを考えたのだった。
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