完璧美人の私がうっかりスカートを穿き忘れた事がキッカケで恋に落ちた話
 副社長をはじめとし、同僚に流された噂のせいで下心の透けた相手から誘われてばかりだった私はそんな彼が新鮮で。

 そして思った以上に楽しかったからだろう。
 仕事帰りに彼とファミレスへ行った帰りも、なんだか少し名残惜しくて。

“仕事が残ってるなら、カフェにコーヒーを飲みに行った時みたいにさっさと戻ればよかったのに”

 家まで送ってくれたのも彼のお節介に近い親切からなのか、それとも彼も楽しいと感じてくれたからなのか。
 後者だと嬉しい、だなんてキャラじゃないことを考える。


 出張から帰った副社長に絡まれた私を助けに駆けつけてくれた姿は、その可愛い彼とは違い男の人を意識させられた。
 誰にも付け入られないようにと思っていたのに、彼に対してはいつの間に弱くてもいいのだと思わされたことが少し悔しく――

 そして彼が契約を取れたと報告してくれたことが堪らなく嬉しいと感じて。

 
「……やだ、顔がちょっと熱いかも」


 これはあのスカートを穿き忘れた時の熱とは違う、薬では治らない熱。
 
“でも流石にこの顔で受付は立てないわね”
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