幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
●変わった夢
魔法6日目(大安)
変わった夢を見た。
気がつくとわたしは、暗澹とした水面に灯火の明かりが映りこんでいる様子を見つめていた。
ざわめきの中から、わたしのお父さんが幸太郎のお父さんやそのほかの大人と話している声を拾い上げる。
明日の予定がとか、天候が、とか途切れ途切れに聞こえる話はわたしにとって退屈で、思わずあくびをする。
すると、Tシャツの裾を引かれ、見ると幸太郎がそこにいた。
小学校に入っているかいないかくらいだと思う。幸太郎はレンジャーもののキャラクターが描かれたTシャツを着ている。
「ミサキ、落っこちる」と言ってわたしの手を引っぱった。
そう言われて始めて、欄干にもたれながら、ぼんやりしていた自分に気がつく。
目の前には大きな湖を臨み、その淵には等間隔で灯篭が立てられ火がともされている。
欄干のわたし木の間から、その様子が見えた。
「明日はすげーんだぞ、いっぱいカッコいいんだ!」
幸太郎は、何やら興奮して話し始め、俺なんかパンツまで準備オーケーだ!と言いながらズボンを脱ごうとしてお父さんに止められていた。
そんな様子をまたバカなことやってる、と冷ややかに見ながら、それでもわたしの胸にもドキドキがあった。
目の前に迫る楽しいことを待ち遠しく思う、わくわくした感情があった。
そんな風に思っていると、一人の男の人がわたし達のほうにやって来て、まずお父さんたちに挨拶をした。
それから、わたしと幸太郎に気づいて笑いかけてきた。
わたしは優しい笑顔が印象的な人だ、と思った。
ただそれだけじゃなくて、その瞬間にたちまち妙な親近感を抱いた。会ったことのある人だ、と思った。