幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
 そんな幸太郎を見てぷるぷると肩を震わせる松代君があまりに悲しいので、
「ちょっと、コータロー!ちょっとは遠慮……あ、ソースついてる」
 と文句を言おうとして、思わず目に付いた幸太郎の口元のソースを指でとる。

「あ」
 何気なく目をやっていた幸太郎の口元が昨日のことを思い出させて、指を泳がせたまま静止してしまう。
「あ、もったいねぇ」

 泳がせた腕をつかまれ、そのまま――――指を舐めとられた。

「ゆ、ゆ、ゆ、ゆびぃっ!!何してんのコータロー!」
「え、何って……」
 言いざま、幸太郎はわたしの顔を見て、にわかに顔を赤くする。

「な、何で顔赤くするの!?赤くするくらいならしないでよ!」
「や、だって、勝手に赤くなるんだからしょーがねぇだろ!」

「……こんなラブコメ見たくなかったな……」
 穂波君が遠い目をする。
「ファム・ファタール、消毒だ」
 松代君はどこから取り出したのか謎のスプレーの消毒液をわたしの手に吹きかけてくる。けれど、なぜか方向が上手く定まらず、顔のほうにまで吹きかかる。

「ちょっ!顔にとんでるって松代君!」
「では、横堀、お前自身を消毒してやろう!」
 今度は幸太郎にスプレーを吹きかける。

「うわぁっ、何すんだよ!」
「……天然なのかな、これは……」
 穂波君は暗い顔をして、ぶつぶつ何やら呟いている。

「ああ、もう何が何やら……」
 わたしがため息混じりにそう言うと、
「楽しいね」
 まほりが笑顔で言う一方で、謎男先生が頬ずりをしてくる。

「まほり……先生が当たってます」
「ごめんごめん、つい当たっちゃうんだ。謎男先生、ミサのこと好きなのかなあ?」
「や、やめてそんな想像」

「ミサが相手ならわたし、譲るからね?」
「いやいやいや!全力で遠慮するよ!」
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