幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
 わたしが一連の動作で乱れた髪を手ぐしで整えようとすると、和史が櫛でとかしてくれて、横堀君がいつの間にか飛ばされていたカバンを拾って渡してくれる。

「ありがとう、横堀君」
「おー」
「俺には?」
「和史は人の髪でアレンジをしたいだけでしょ」
 そうこう言っている間に前髪に触れると、いつの間にかアップにされているのが分かる。

「それは否めないけどね。それより、この後、スウィーツ食べて帰ろう?新しい店が駅ビルの中に出来たんだ」
「スウィーツって言わないで、甘いものって言ってよ」

「あ、俺も行ってもいいか?」
「うん、良いよ。カズシのおごりだから」
 わたしがそう口にすると、和史は憮然とした顔をする。そんなに落ち込まなくてもいいのに、というほどまでの顔だ。

「やった、腹減ってたんだよなー」
「本気で……横堀も来る気なんだ?空気読んで欲しかったな」
「読む空気なんてあったっけ?」
 とわたしが言うと、和史は微妙な顔をする。

 言いたいけれど、今ここでは言いづらいというような表情だ。
「一体なんなの?」

「今は言えないな。二人きりになったら言うよ」
「……何か、犬になった初日の自分を見てる気分だな」
< 278 / 395 >

この作品をシェア

pagetop