幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
「ダメ男プロデューサー戸田」
 まほりがあだ名を呟く。

 確かに話を聞いていると松代君はちょっとダメっぽいところがあるし、戸田さんがそれを助長している気もしないでもない。
 ただ、わたしにとってそれは、他人事ではない気がしたのだ。

「ミサキが嫌がるから」と言って、ただただ見守るに徹してくれていた幸太郎のことを思い出したから。
 戸田さんの言っていることは、幸太郎のしてきてくれたことに似ている。

 わたしが恋愛を面倒くさがるから、わたしといるときはそんな要素を見せないでいてくれた幸太郎に。
 だからきっと、わたしと松代君は似ているのだと思う。
 見守られていることに気づかない鈍感なところが、とても似ている。

「でも、戸田さん。今まで我慢していた分が爆発しちゃったから……こうやって変な世界になっちゃったんだよね?松代君と戸田さんは仲が良くなくて、『わたし』がいなくて、『コータロー』もいない――――」
「ごめんなさい、本田さん……」

「ううん、責めてないよ。そうじゃなくて……わたしが言いたいのは、別のこと。鈍感な人にはガツンと言わないと分からないんだと思う。わたしも、分からなかった。まほりの魔法で色々なことが起こるまで、自分を取り巻く思いなんて、何にも分からなかったんだ。それって、戸田さんからしたら、ぐしゃあってしたくなっちゃうくらい鈍感なのかもしれないけど……。

でもね、ちゃんと伝えれば、鈍感な人もちゃんと考えると思う。すぐに答えは出せないかもしれないけれど、ちゃんと考えて答えようとすると思う。だから、負担かけるのは可哀想って言って、諦めちゃわないで欲しいんだ。幼なじみなのに、戸田さんだけが大変なのは、おかしいもん」

「ミサ……」
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