幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
「ど、どうして!?」
 わたしがそこにいた。

 そして、わたしは、わたしの手の甲からずるずるとはい出そうとしている。
 そんなホラーな光景を理解しようとするのは難しいけれど、わたしの姿をしている人物が誰なのかは、理解できるつもりだ。

 つまり、
「コータロー!?」
 なのだと思う。

 わたしがそう口にすると、
「よぉ、ミサキ。元気だったか?」
 幸太郎は、能天気にもニコッと笑い、片手を挙げてそんなことを言ってくる。

「元気だったかって……」
 それはこっちの台詞だ、とわたしが口を開く前に、幸太郎は、
「プリンス、お前!キングに俺の馬と足並み合わせろって言われてただろ!?何でとんでもねー速さで去ってくんだよ!お陰で俺は、魔の樹海をさ迷う羽目になったんだからな!」
 一連の出来事を見ていた穂波君(偽)へと不平不満をぶつける。

「君を普通に帰したんじゃ面白くないじゃないか。それに、君が樹海をさ迷うファントムに、魂を食べられでもしたら、もっと事は面白くなる気がしたんだ」
「面白くねーっつの!てか、何でカズシのかっこしてるんだよ?」

「ビジュアル的にも俺につり合うちょうどいい器が、この者くらいだったからね」
「いや、お前、それはさすがに鏡見ろよ……」

 まるでクラスメイトと話すかのように、魔界のプリンスと話す幸太郎。
 わたしの手の甲の上で話す幸太郎。

 何でだろう、とても不服に思うのは。

 奴は、突然出てきて、人の手の甲の上で、なに呑気に人の手の甲に居座っているのだろう。
< 362 / 395 >

この作品をシェア

pagetop