幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!

●末法系でさようなら

 穂波君、もといプリンスが上半身を起こしたのが分かった。
 けれど、そこで不意に、例の頭の芯がとろけるような感覚に襲われる。

「しまった……!」
 多分これは、魔法なんだろう、とぼんやりとした頭で思う。

 暖かくも冷たくもなく、ただただ何かが触れているという不思議な感覚、これには覚えがあったからだ。
 ただ、口元になぜかぽっと具体的な温かみを感じた。少し湿ったような空気と、熱。

「な、な、な――――!?」
 左方向から聞こえる幸太郎のうるさい声に呼ばれるようにして、わたしは目を開けた。

「あれ、何……?」
 肌色の何かが目の前にあった。

「今回のお土産はこれだけにしておくよ」
 そう言って、それが少しはなれたところで穂波君の顔だと気づいた。

 口元の感覚は、つまり、その、そういうこと……?

 ハッとして、穂波君の方を見ると、頭の上のほうからなにやら米粒のような形をした白い何かがはみ出している。

 するするすると穂波君の頭からそれは、抜けていき、
「はははは!ざまーみろ横堀幸太郎!俺だって人間の幼なじみが欲しかった!」
 高笑いとともに、光に包まれ消えていった。

「プリンスお前ぇぇ!」
「……」

 キスされちゃった、どうしよう?
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