幼なじみが犬になったら、モテ期がきたので抵抗します!
「……し、しるしぃ?」
「ミ、ミサキ、こいつと知り合いなのか?」

「う、ううん、全然」
「なるほどね。この日からやり直すことにしたというわけか」

「この日から……?」
「どっちみち、君には魔界に来てもらうのだから、余計な記憶なんてないほうがいいのかもしれないね」

「な、何を言ってるの?魔界って……」
「魔族のキスには、服従の魔法が込められているのさ。発動すれば、身体に黒いドットが表れる。これは、魔族にしかとけない魔法だ」

 米粒はこちらへ手を伸ばしてくる。
 ぼんやりと始まったわたしの一日は、この瞬間、パッと霧が晴れるようにして鮮明になった。

「プ、プリンス!」
「な、何でお前が!?」

 わたし達は、同時に声を上げ、顔を見合わせる。
 逃げよう、と目配せをする間もなく、
「逃げ回られても面倒だし、この敷地ごといただいて行こうか」
 ゴゴゴォっと地響きがして、床全体、建物全体が沈んでいく感覚がした。

 これって……MAKAI行き?

 青い顔をしたわたし達と、恐らく巻き込まれてしまったであろうたくさんの生徒達を連れて、大地が魔界へと沈んでいく。

「ああ……」
「またか……」

 本日は、8月×日(赤口)、わたしの秋は、遠い。

                              おしまい
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