俺さま御曹司元カレと強引な後輩くんのダブル溺愛に困っています。

言わぬが花

 きまり悪そうに老婦人を眺めている彼に向き直る。

「どうして本当のことを言ってくれなかったの?」
「…すみません」
「女の子をナンパしていたなんて嘘を言ってさ」
「本当のことを言うのは何だかこっぱずかしいじゃないですか」
「こっぱずかしいって、黒崎くん、人助けは立派な行為だよ」
「でも、そういうことは言わないのが花です」


 "言わぬが花"か。

 ふーん。見かけによらずしゃれたことを言うじゃない。


「先輩。俺に惚れました?」
「はい?なにそれ」
「いや。ギャップ萌えというか。その、普段のクールな俺の素顔を知って惚れてくれたかな、なんて」
「それ以上は言わぬが花よ」
「すみません」
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