俺さま御曹司元カレと強引な後輩くんのダブル溺愛に困っています。

チャラい男は大嫌い

「ところでほかの人は?先輩、知り合いを連れて来るって…」
「急に都合が悪くなったのよ」

 失恋の傷の痛みを慰め合うはずが、その友人は勝手によりを戻してしまい「わたし、初詣は彼と行くことになったから」とか言って元サヤに収まった。裏切り者め。

「それできみの友人はどこいいるの?」
「それが急に都合が悪くなりました」
「は?」
「俺と先輩だけですね」
「…帰る」

 冗談じゃない。二人っきりで初詣に行くほど黒崎くんと親しくないし、もしも知り合いの誰かに目撃されて勘違いされたら面倒くさい。

 クルッと踵を返して立ち去ろうとしたわたしの手が、後ろからハシッと掴まれた。

「待って先輩…」
「あ…」
「あっ」

 小さな声が重なり、二人とも凍りつく。

「す、すみません」

 掴んた手をパッと放し、彼はその手でばつが悪そうに頭を掻いた。

 手を…握られた。その温かい感触が残っている。動揺を隠し、わたしはあえて冷たい声を出した。

「だって黒崎くんと二人だけじゃあ…ね。誰かに見られて勘違いされるのはきみも嫌でしょ」
「俺は…かまわない」
「えっ」
「いや、あの、せっかくだから俺たちだけで行きませんか?」
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