生贄教室
化け物
渡丘中学校の3年S組だけ電気が灯り、その中からはペンを走らせる音だけが聞こえてくる。
教室の中には異様な緊張感が漂っていて、みんな一様に白いテスト用紙へ向かって回答を書き進めている。
このSクラスは特別進学コースになり、今年高校受験に力を入れている生徒たちばかり10人で成り立っている。

10人が目指す学校は国内外で有名な高校ばかりで、もちろん偏差値も高い。
他のクラスの生徒たちが早々に帰宅してもなお授業は続いていた。
Sクラスは本校舎から離れた3階で、渡り廊下でつながっている。

そのため他のクラスの生徒がまだ残っているのかどうかもわからないままだった。
「はい、そこまで」
担任の男性性教師である須江正のひとことを合図にして全員がペンを置く。

教室に流れていた緊張感は一気に緩んで穏やかな空気に変わった。
その中で天井へ向けて大きく伸びをした女子生徒がいた。
宮木郁だ。

少しぽっちゃり体型の郁はマスコット的な可愛さがある。
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