生贄教室
犠牲者
教室を出て屋上へ向かう階段を駆け上がる。
突如グランドに出現した化け物はいとも簡単にヘリをなぎ倒した。
きっと、ヘリに載っていた自衛隊員たちは助かっていないだろう。
それに、あんな至近距離での攻撃も効果がなかった。

化け物の皮膚はダイヤよりも固く頑丈だ。
自分1人だけなら教室のカーテンをしめきって、耳栓をして一夜を明かすこともできたかもしれない。

だけど生徒たちは無理だ。
多感な時期だし、S組の子たちはみんな勉強漬けでやってきた。
それだけでもストレスを溜め込んでいるはずなのに、あの化け物が引き金になってしまう。

これから先のことを考えると、今すぐに生徒たちだけでも家に返してやりたかった。
一段飛ばしで階段を駆け上がればすぐに屋上へ出られる灰色の扉が現れる。

先生はポケットの中からジャラジャラついた鍵の束を取り出して、その一つを鍵穴に差し込んだ。
そして鍵を開けて外へ出る。
途端に強い風が吹き付けてきて、体ごともっていかれそうになった。
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