『絶食男子、解禁』
究極のラプソディ

神様からの贈り物のような…。
前夕(ぜんせき)から降っていた雨に洗われ、抜けるような青さに晴れ渡った十月中旬の朝。

ベランダに置かれている寄せ植えのコスモスが淡く咲きほこりながら、嬉しそうに風に揺れている。

「つぐみ~、そろそろ時間だぞ~」
「はーい、今行きますっ」
「最終打ち合わせがあるとか、言ってなかったっけ?」
「あるある!…なんだけど、他の部署の子たちが祝電送りたいから、式場の場所を教えて欲しいって連絡が来て…」
「あ~、俺んとこにもあった」
「今、挙式情報を返信したとこ」
「じゃあ、もう出れるんだな?」
「うん!」

玄関に用意しておいた大きな紙袋を持ってくれる峻。
彼と同棲するようになって半年が経った。

「どう?おかしくない?」

ラインストーンがあしらわれたピンヒールを履き、二畳ほどある玄関でくるりとターンして見せる。

「珍しくアップにしてるから、うなじと背中が超エロい」
「そーいうことを聞いてるんじゃないんだってばっ」

十センチもあるヒールを履いても、彼を見上げなければならない。
腰に回された手が少し強引に抱き寄せる。

「よかったな」
「……何が?」
「昨日胸につけたキスマーク、ギリ隠れてる」
「っっっ」

意地悪く耳元に呟いた彼。
こういうところ、本当憎たらしいのに憎めないんだから。
Yシャツの襟に隠れないところにつけてやればよかった。
そしたら少しは私の気持ちが分かるかしら…?

「行くぞ」
「うんっ」

スッと差し出された彼の手をぎゅっと掴んだ。

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