『絶食男子、解禁』
エピローグ

五年後。
目の前に差し出されたのは、薄紅色のリボンで結ばれた一輪のバラ。

「おたんじょうび、おめでとう」
「ッ?!……フフッ、ありがと」
「だいすきだよっ!!」

後ろ手に近づいて来た時は何かな?と思ったけれど、このバラをサプライズで渡したかったのね。

「おいっ、コラッ!!何、勝手に人の嫁さん口説いてんだよっ!」
「およめさんならりこんしたらえんがきれるけど、ぼくはママのむすこだから、いっしょうママとのえんはきれないもんね!」
「はぁぁああ?!この、ませガキがッ」
「はいはい、二人とも、その辺にして!せっかくの誕生日なんだから、平和に過ごそうよ」
「……チッ」
「舌打ちしないの」
「ママ、よくこんなおとことけっこんしたね。もっといいおとこがいなかったの?」
「ッ?!……ウフフッ、パパは十分素敵な男性よ」
「ほ~ら、聞いたか?(しのぶ)が幾らママが好きでも、ママはパパのお嫁さんなんだよっ」
「フンッ」

今年五歳になる息子の忍は、峻と張り合うくらい独占欲を剥き出しにする。
息子に好かれて悪い気はしないけれど、父親のことを悪く言う子には育って欲しくない。

「ママ、これね?おんどでいろがかわるんだって」
「えっ、そうなの?」
「りおちゃんのママ()がおしえてくれたの」
「そうなんだ。ありがとうね、ママ大事にするね♪」

バラなら、挿し木にできそう。

「パパはよういしてないの?」
「……してないわけないだろ」
「ふぅ~ん」

完全にマウント気取りの息子と、それに対抗心を燃やす父親。
たぶん、峻は忍が寝てから渡すつもりなのだろう。
毎年子供が寝た後に、ゆっくり語り合いながらプレゼントを手渡されるから。

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