ファーストクラスの恋 ~砂漠の王子さまは突然現れる~
出会い
時刻は夜八時。
さっきまで綺麗な夜景が見えていたのに、今私の前には漆黒の闇が広がっている。

「なんだか寂しいわね」
誰に言うでもなくこぼれた言葉。

ん?

当然誰からの反応もないと思っていたのに、タクシーの運転手とルームミラー越しに目が合った。

Ok no problem(大丈夫、問題ありません)
同じくミラーに向かって返事をすると、運転手は再び前を見る。

ここは中東カタールのハマド国際空港まで続く高速道路の上。
私はホテルで手配してもらったタクシーに乗って国際線のターミナルに向かっているところだ。

We will| arrive in (あと十分ほどで到着です)about10minutes」
Ok, thanks(わかりました、ありがとう)

成田行きの飛行機は夜中の二時出発だから時間はたっぷりあるのだが、私が急いでいるようにでも見えたのだろうか。運転手はにこやかに声をかけてくれた。
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