ファーストクラスの恋 ~砂漠の王子さまは突然現れる~
私がぶつかったのは先ほど助けてもらった、王子様みたいな男性だった。

「またお会いしましたね」
「ええ」

普段の私はごくごく普通の女子で、大人しい方だとも饒舌な人間だとも思わない。
もちろん日本人特有の押しの弱さがあり海外に出ると主張が弱いとみられることはあるが、話すこと自体が苦手な人間ではない。
それでも彼の前に出ると、なぜか言葉が続かない。

「日本の方ですよね?」
「・・・はい」

日に焼けた肌と、深い緑色の瞳。
彫刻のように整った顔立ちは見とれてしまうほどに美しい。
そして、このアラビアンな格好から日本語が出てくることが不思議だった。

「よかったらご一緒しませんか?」
「え、ええ」

なぜ私はうなずいたのか、それは自分でもわからない。
無意識のうちに返事をし、私は男性とともに歩きだしていた。
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