ファーストクラスの恋 ~砂漠の王子さまは突然現れる~
恋人は王子様
後になってわかったこと。それはハサンの名前が三石ハサンで、三石財閥の跡取りだったこと。
さすがにそれを聞いた時には衝撃だったけれど、私達は変わらずに続いている。
秘書して、そして恋人として、いい関係を築きつつある。

「凪、この書類を専務の所に頼むよ」
「はい。ですが、職場では名字をお呼びください」

パートナーとして公式の場に出ることともあるために取引先や会社の上層部には顔が知れていて、恋人として認識もされているとはいえ、職場であまり親し気な態度をとるのはよくないと思う。
やはりある程度の節度は守るべきだ。

「いいじゃないか、油断するとすぐ凪に声をかけてくる奴がいるから安心できないんだよ」
「それは・・・」

付き合うようになってわかったことがもう一つ。
それはハサンがとってもやきもち焼きだということ。
仕事上の付き合いやパーティーの席でも、私に声がかかるとすごく嫌そうな顔をする。
私としては仕事に影響が出るのではないかとすごく心配なのだけれど、焼きもちを焼いてもらうこと自体は嫌な気分ではない。

「もしかして、例の元カレから連絡とか来てないよね?」
「ええ、大丈夫です」

中東旅行の帰り機内で鉢合わせした元カレは、ハサンが三石商事の社長と聞き恐れをなしたのかその後連絡をとってくることもなかった。
それでもハサンは心配なようで、事あるごとに元カレのことを聞いてくる。

「何かあればすぐに僕に言うんだよ」
「はい」
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