ファーストクラスの恋 ~砂漠の王子さまは突然現れる~
会社を辞めることは悔しい決断ではあったけれど、いざ決心をすれば清々しい気持ちにさえなれた。
自分が間違ってない以上、そんな会社に未練はないと思えた。
幸い営業職で培たコネクションのお陰でいくつかの会社から転職の誘いももらっているし、今の会社からは退職金も出る。少しゆっくりして次のことを考えようと考えた時、なぜか大学時代に旅行の乗り継ぎで訪れたこの空港ラウンジを思い出した。
行き届いたサービスと豪華な装飾、そして行き交う多国籍の人々。
当時はまるで自分がお姫様になったように気分だったし、初めて異文化に触れたことでこの世の中にはまだまだ自分の知らない世界があるのだと痛感した。
もう一度あの場所に行きたい。
退職届を出した時、私はなぜか無性にそう思った。
もちろん、ファーストクラスのチケットを現金で購入するだけの余裕はないけれど、営業職をしていたせいで飛行機のマイルは結構溜っている。
これを使ってカタールからのファーストクラスに乗ろうと、私は中東旅行を思い立ったのだった。
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