「みんなで幸せになると良いよ。」
帰り際、佐紀ちゃんは『連絡先交換しませんか』といってきたけど断った。
これ以上野田の亡霊に付き纏わられるのは嫌だったし、話も分かったし。


「縁があったら嫌でも会うよ!」というと

『そうですね!』と佐紀ちゃんは笑顔でうなずいた。

「けーいーちー」と啓一は叫んでいる。


考えてみたら僕のことではなかったんだ。


奇妙なつながりに「君も大変やね。」と頭を撫ぜると「キャッキャッ」と喜んだ。


『無言で叩くなよ。注意してから。わかったね、佐紀ちゃん。』

ヒイラギは初めてみせるような優しい顔で若い母親に言った。

『わかった。ありがとう。また、会おうね。絶対。』

「あっ、そうや!ちょっと待って。」

親指を立てて顔のパーツを中心に集め、くしゃっと崩れた顔をふるふると震わせた。

『…ケイイチさん?』

佐紀ちゃんは不思議そうに、苦笑いを浮かべた。

代わりに隣りの小さい啓一は「キャハッ」と笑い、

真似るように顔をくしゃくしゃにして笑った。

『何しとん?』

黙っていたヒイラギの声は少し軽く、呆れたようにつっこんだ。

「…幸せのおまじない…みたいなもん。」

佐紀ちゃんもヒイラギも僕の行動をただ子供をあやしているだけと流した。

『じゃぁ、またね。』

どちらともなく手を振って

有って無いような約束をかわして僕らは分かれた。
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