君が死ねばハッピーエンド
幸せすぎる平凡な日常
「シイナー!早くしなさい!待たせ過ぎよ」

「はいはい、分かってるってー」

階段の下からママが私を大声で呼ぶ。
これで三回目。

約束の時間は七時半。
まだ七時二十分だから遅れてるわけじゃないのに、さっきから私は急かされている。

気持ちが焦っているからか、結び慣れた制服のリボンのバランスがうまく決まらない。

左の裾が短すぎるし、なんだか斜めになっちゃうし。

何回かやり直して、やっと上手に結べたリボンに溜め息を吐いてから、前髪も微調整して、ようやく部屋を出て、階段を掛け下りる。

「やーっと来たわね、この子は本当にもう…。ごめんね、いつもいつも」

ママが苦笑いを浮かべながら玄関を見た。

「朔、ごめんね!お待たせー」

朔は、高校に入ってから同じクラスになって出会った。
高一の文化祭の後夜祭で私から告白して付き合っている。
二年生でも同じクラスになれて、付き合ってもうすぐ一年になる。

朔はかっこいい。
すごくかっこいい。

彼氏だから、とかじゃなくて、学校の中でもトップでかっこいいと思う。

一目惚れだった。
ズバ抜けて容姿が良くて、温厚で誰にでも優しい朔は当たり前に人気者で、こんな人と自分が付き合えるなんて思っていなかったけれど、「好きです」って私の告白に「俺も」って朔が答えてくれた時は、本当に日本語の意味が分からなくなるほど混乱した。

今でも変わらず朔が大好きだし、私もずっとそう思ってもらえるように、朔の為だったらなんでも努力できると思う。
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