君が死ねばハッピーエンド
「シイナちゃん!早く入って!」

人混みを掻き分けて、店長が私を強引に店内に引っ張っていく。

「店長!何ですかコレ!」

カフェの外壁は全部ガラス張りで、外からでも店内がよく見える。

席が空いているかどうかすぐに分かるから、お客さんも入りやすくなっている。

その、入り口のドアから右側のガラスが割られていて、辺りには何枚もの写真がバラ撒かれている。

ガラス全面が割れているわけではなくて、直径三十センチメートル前後くらいの大きさだ。

店長に引っ張られながら、チラッとしか見えなかったけれど、アレは私だ。

私と朔の写真。
見間違うはずが無い。

「なんで…」

「シイナちゃん、こっち。座って」

事務所まで連れられて、パソコン前のデスクで、ガススプリング式のチェアに座るように促される。

「私が店に着いた六時半にはもうこうなってた」

「そんな…」

「もうすぐ警察の方が着くと思う。防犯カメラをチェックしてたとこよ」

店内にはもちろん、入り口の外側にも防犯カメラが設置されている。

店長は一時停止させていた映像を、モニター上の再生ボタンをクリックして動かした。

「これ。こんな感じの人に心当たりある?」

再生時刻のバーは朝の五時からちょっと進んだところだ。

黒いレインコートのような物を着て、フードをすっぽり被っている。

フードの下から微かに見えている髪の毛はショートカットみたいだった。

ネックウォーマーをわざと鼻の辺りまで上げているように見える。
サングラスをしていて、顔は完全には分からない。

身長はそんなに高くないみたいだけど、性別を判別するのは難しかった。

「分かりません…」

「そう」

店内のレジは入り口のそばに設置されていて、その位置の防犯カメラからもその人物は確認できた。

けれど、どの角度から見てもやっぱり印象は変わらなくて、唯一、「朔じゃなくて良かった」ってホッとしている自分に気づいてしまった。
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