ミル*キス
――カランコロン


古い店にありがちなドアベルの音が響く。


その瞬間、コーヒーの香りに包まれた。

そこはホントに絵に描いたような“喫茶店”だった。

今流行りのおしゃれカフェとは対極にあるような感じ。


例えば、コーヒーの味にはちょっと煩い常連さんが集うような

……そんな店。


扉と同じく年代を感じさせる飴色に磨かれたカウンター席の他に、テーブル席が4つあるだけの小さなつくりだった。

店内にはジャズのスタンダードナンバーが心地良いボリュームで流れていた。



「いらっしゃいませ」


店の中に入ったとたん、澄み渡るような声が響いた。


カウンターの中にいた人が振り返る。

その瞬間、息がつまりそうになった。



ケンジぃ……。

これは“可愛い子”じゃないな。




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