ミル*キス
ミーコは誰かからオレの名前を聞き出したらしい。

オレのこと、「工藤さん」って呼んでる。



「おっ。心外やな。オレ、誰にでも優しいっちゅうねん」


オレはそう言って、にっこり微笑んだ。


「うわっ。その笑顔……わざとらし! ウソっぽい! なんか詐欺師に見える」


「お前、色々と失礼なヤツやな」


「失礼なのはお互い様ですよ。だいたいお客に“お前”とかありえませんよ!」


「それは失礼しました。でも、アナタと一緒にしないでいただけます?」


「ちょっ、どういう意味ですか?」


「そのまんまの意味で」


「キー!!」


こんな感じでしばらくミーコをからかい続けていると、店内にいるみんながクスクス笑ってた。

(つーか、客全員、オレ達の会話に聞き耳立ててる……ってどうよ?)




「でもやっぱり、無言で食事するのって、なんか苦手ですぅ」


まだ納得いかないのか、ミーコはブツブツ呟いていた。



この子はきっと幸せな家庭で育ったんだろうな。

ふとそんな気がした。


家族みんなで食卓を囲んでいる賑やかな食事風景が目に浮かぶ。
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