私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
第七章 許されないワルイコト
お祭りデートを決めた翌日、灰谷家なじみの呉服屋が来てくれた。

「可愛らしいお顔立ちですし、こういうモノがお似合いかと思いますがいかがでしょう?」

炯さんと同じ年くらいの女性スタッフが勧めてくれたのは、ピンクの花柄の浴衣反だった。

「そう、ですね……」

たぶん、同年代の女性のほうが感性が近いだろうと彼女を寄越してくれたのは助かる。
ありがちな、職人の手によるごりごりの芸術品絞り浴衣など勧められても困るし。
しかし、私としては可愛らしいものよりもシックな大人っぽいものが欲しい。
炯さんはなにかと私を子供扱いしてくるから、大人の女性として見てもらいたいのだ。

「もうちょっとこう、落ち着いたものがいいんですが……」

「落ち着いたものですか?」

彼女が、ごそごそと持ってきた反物を漁る。
並んでいるのはピンクや水色など、明るい色が多い。
炯さんの趣味なんだろうか。

「このあたりはいかがでしょう?」

今度出てきたのは、黒の幾何学模様に水色の花を散らしたものだった。
他にもいくつか、一緒に並べられる。

「ううっ、悩んじゃう……」

どれも素敵で、目移りした。

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