私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
第十一章 ワルイコトが起きても大丈夫
目が覚めたら、炯さんの腕の中にいた。

「おはよう、凛音。
身体、つらくないか?」

「……はい」

彼は私を気遣ってくれるが、目の下にはくっきりとクマが浮き出ている。
もしかして、眠れていないんだろうか。

「腹、減ってないか?
それとも喉が渇いてる?」

炯さんは私を心配しているが、私は彼が心配になった。

「なんか持ってくるな。
凛音はまだ、寝ていていいからな」

「あの、炯さん!」

寝室を出ていこうとした彼を止める。

「その。
……お手洗いに、行きたいので」

こんなことを言うのは恥ずかしいが、そうでもしないとこのまま今日はベッドに拘束されそうだ。

「あ、ああ。
そうだな。
どうぞ」

ドアを押さえ、彼が道を譲ってくれたので、ベッドを下りてお手洗いへ向かう。
用事を済ませながら目に入ってきた私の手足には、包帯が巻いてあった。
気づくと同時に、そこがじんじんと鈍く痛み出す。

「けっこう擦れてたもんなー」

昨日は異常事態だったから感じていなかったが、もしかしてけっこう酷い傷になっていたりするんだろうか。
痕にならなきゃいいんだけれど。

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