私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
第三章 これからはじめるワルイコト
お見合いから二週間後。
私は炯さんの家に引っ越しをした。

「ようこそ、我が家へ」

「お、お邪魔します……」

おずおずと彼の家に迎え入れられる。
郊外にある彼の家は、正面の壁が優美な曲線を描いており、とても美しかった。

「まずは家の中を案内するな。
ここがリビングだろ」

通されたリビングは広く、ベージュとアイボリーを基調に揃えられた室内は、とても落ち着いている。

「風呂、俺の書斎、寝室……」

次々に部屋を炯さんが案内してくれる。
アスレチックルームやシアタールームまであり、遊び心が満載だ。

「あと、ここは凛音の部屋な」

「……え?」

最後に彼が案内してくれたのは、言い方が悪いがなんの変哲もない部屋だった。
簡素なライティングデスクと、シンプルな小さめのベッドだけが置いてある。

「えっと……」

「凛音だってひとりになりたいときがあるだろ?
本を読んだりだとか音楽を聴いたりだとか。
とにかく、自由に使うといい」

困惑気味の私に、彼が説明してくれる。

「といっても、今はほとんどなにもないけどな。
凛音の好きにカスタマイズしたらいいよ」

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