【短】made by……



 居心地が良く、笑顔と幸せの溢れる天ヶ瀬家。

 それが変わってしまったのは、リミが高校一年生、充希が中学一年生の冬の日のことだった。


 ──充希の両親が、交通事故に巻き込まれて亡くなった。


 優しかった二人がいなくなって、リミもなかなか立ち直れないほど大きなショックを受けた。

 ならば当然、息子である充希の受けたショックは計り知れなかった。


 学校ではどうやら気丈に振る舞ってはいるらしいものの、家に変えれば暗くふさぎ込んでしまう。



「リミ……君はいなくなったりしないよね?」



 弱々しい声で何度もそう確認してくる充希。リミはそのたびに彼を抱きしめ、心の支えになろうと決意した。


 しかし、そんなリミの態度を良く思わない人がいた。天ヶ瀬家の当主、充希の祖父だ。



「リミさん、頼みがある。……充希と、少し距離を置いてはもらえないか?」



 両親がいないという似た境遇の、年上の女。当主は、充希がリミに依存してしまうことを危惧していた。



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