恋はしょうがない。〜同僚以上、恋人未満〜



古庄は新聞を読むふりをしながら、まんじりと真琴の様子を窺い……、真琴が机の上を軽く片付けて立ち上がるのを見計らって、古庄もボールペンを手に持ち、おもむろに職員室を出ていく。……ように見せかけて、実は真琴と歩調を合わせて前後して会議室に入り、自然に隣の席に落ち着く。


——よし……!


と、古庄は内心小躍りして喜んでいるが、隣に座っても特に何があるわけでもない。

それでも、少しでも好きな人に近づきたい。近づいて、愛しい人の息遣いや匂いを感じたい——。
それは、古庄の健気な恋心の表れだった。



一方の真琴は、古庄のことを意識している素振りは一切見せなかった。
特に、想いが通じ合っていると確かめ合った直後は、本当に素っ気なかった。出逢った当初のように、〝嫌われてる〟と思ってしまうくらいに。


——本当に俺のことが好きなのかな?


時折、そんな疑問というか不安が、頭をもたげてくる。不安に駆られて、真琴の気持ちを確かめたくなる。


だけど、その度に古庄は思い直した。


——賀川先生にも、きっと葛藤がある。今は時間が必要だ。



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