余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
お嫁さんにはなれない
また、倒れちゃったんだ。


目を覚ました萌は呆然と病院の天井を見上げていた。


ベッドの横には母親がいて、さっきから忙しく立ち動いている。


「萌、今からまた検査だからね」


そう言われても頷く気力が残されていなかった。


ここ最近はずっと調子がよかったから、倒れてしまったことへのショックが大きかった。


前回は病気の数値も随分よくなっていたようだったし、もしかしたらこのまま治るんじゃないかと期待してしまった。


だけど世の中そんなにうまくはできていない。


なんの治療もしていない病気が安易に治ることなんてありえないんだ。


「ここまで学校に通うことができたのは奇跡だよ」


病室に入ってきた担当医が嬉しそうな顔でそう言った。


「そうですか……」


けれど萌の心は全然晴れなかった。


普通ならもう寝たきりでの治療になっていてもおかしくないと言われても、実感がない。


自分が幸せなのか不幸なのかわからなくなる。


「数値は劇的に悪くなっているわけじゃないから、ちょっと疲れが溜まっていたのかもしれないね」


検査結果を見て医師が萌にそう伝えた。
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