「トリックオアトリート」ならぬ脅迫または溺愛! 〜和菓子屋の娘はハロウィンの夜に現れた龍に強引に娶られる〜
「それ以外に道はない」
 彼の目が萌々香を射すくめるように見る。
 目の奥にちらりと青銀が光ったように見えた。
 冷たい眼差しとは逆に、手はとても温かかった。それは萌々香の胸の奥まで届き、鼓動を早くする。

「買ったよー!」
 恵武が声を上げた。

「行こうか」
 尊琉に促されて歩きだす。手は繋がれたままだ。

 早く手を離さなくては。
 そう思うのに、なんだかふりほどけなくて、萌々香は戸惑いながら彼について歩いた。

「今度こそ案内してもらえるか」
「でも……」

「昨日助けたのは誰だったかな?」
 萌々香は言葉に詰まる。こんなときにそれを持ち出してくるなんて。

「オレも行きたい!」
 無邪気な恵武の声に、萌々香は負けた。

「せめて着替えを」
「ダメだ」
 尊琉は即答で拒否した。

「せっかく綺麗なのに着替えるなんてもったいない」
「そうだよ、天女様みたいだよ」
 尊琉に恵武が加勢する。

「でもこれじゃ目立ちますし……」
「なにか言われたらハロウィンだから、でいいだろう」
 尊琉がにやりと笑って言う。

 萌々香はあきらめた。
 逆にこの衣装でなければ、本当に商店街の人に誤解が広がってしまうだろう。
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