「トリックオアトリート」ならぬ脅迫または溺愛! 〜和菓子屋の娘はハロウィンの夜に現れた龍に強引に娶られる〜
「仲いいのね」
「こいつが生まれたときから一緒にいるからな」

 萌々香は恵武にまたせんべいを渡す。恵武は今度は様子をみながらかじりついた。

「そういえば、親子で出張ってするものなの?」
「親子じゃない」
 萌々香の問いに、尊琉は驚いたように答えた。

「兄弟じゃないって言ってたから」
「オレはお目付け役だから!」
 恵武が言う。

「そういう遊びよね?」
 萌々香は尊琉に確認する。

「遊びじゃなくって!」
 恵武は萌々香に主張する。

「せんべいがついてるぞ」
 尊琉が言うと、恵武はあわてて服を払った。

「親戚の子供だ。いつもは出張には連れて来ないが、今回だけは特別なんだ」
「観光地でもないのに」

「そのおかげで君と出会えた」
 尊琉が真面目な顔でそんなことを言うから、萌々香はどきっとした。まるで会えたことを喜んでいるみたいで、さらには自分に好意を持っているみたいに聞こえる。

 絶対に本気じゃないだろうし、からかっているだけなのだろうに。
 思わずうつむくと、恵武の頭にまるっこい耳が見えた。腰のあたりからは狸のようなしっぽが生えている。

「いつの間に仮装したの? かわいいね」
 恵武に声をかけると、恵武は萌々香を見て首をかしげた。
 しっぽがぴくぴくと動いている。まるで本物のようだ。

「結婚についてだが」
 急に尊琉が言い、萌々香は顔を上げた。

「そろそろ返事をくれてもいいと思うが」
「そろそろってタイミングじゃなくないですか?」

 まだ出会ってからさほど立っていないというのに。彼のことなんて名前しか知らない。

「君は俺と結婚するしかない。そうでなければ……」
 彼は言葉を切って鋭い目で萌々香を見る。
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