初恋からの卒業


十年前にクッキーの缶箱を埋めたのは、桜の木のあの一番長い枝の下。確かこの辺りだったはず。


曖昧な自分の記憶を頼りに、土を掘り続けること五分。


あ、あれ? こーちゃんと二人で土を掘っても掘っても、なかなか缶箱は現れてくれない。


もしかして自分が思っていた以上に、もっと奥深くに埋めたのだろうか? それとも、掘る場所を間違えてしまった?


嫌な予感がし、シャベルを持つ手に僅かに疲れを感じ始めたときだった。


「あっ!」

シャベルが、何か固いものに当たる感触がした。


「環奈っ!」

「こーちゃん!」


ようやく缶箱が見え、私とこーちゃんはお互いの顔を見合う。


「よいしょっ」

こーちゃんが穴に腕を突っ込み、缶箱を取り出してくれた。


「あーそうそう。この箱だ」

「うわー、懐かしい」


クッキーの缶箱は十年の時を経て、泥がつき錆がかかっていたけれど。今のものとは少しデザインが違う一昔前の赤い箱が、とても懐かしい。


「いいか? 蓋、開けるぞ」


固定してあったガムテープを外し、こーちゃんが缶箱を開けてくれる。

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