初恋からの卒業


こーちゃん……。


今とは少し違う、まだ子どもらしさの残る文字。

手紙からは、当時のこーちゃんの私への想いが伝わってくる。


こーちゃんって、ほんとに変わらない。
大人になった今だってそう。


『スマイル、スマイル! 笑ってればきっと良いことある』

私が落ち込んでいたら、いつも元気づけてくれて。


『何度もため息ついてると、幸せが逃げていくぞ?』

『俺、環奈には笑ってて欲しいからさ』

そう言って、笑いかけてくれた。


そして今の私よりも幼い、中学生だったときも。

“ 環奈が、ずっと笑顔でいられますように。”

“ 幼なじみとして、俺はいつも環奈の幸せを願っています。”


子供の頃からずっとこーちゃんは、私のことを想ってくれていたんだ。私の幸せを、いつも願っていてくれたんだ。


それなのに、私は……。


こーちゃんからの手紙を持つ私の手が、プルプルと震える。


思い返してみれば、私は今までずっと自分のことばかりだった。

こーちゃんの結婚式の招待状が届いたときも、ショックを受けるばかりで。

こーちゃんが絵里さんと一緒にウチの店に来たときも、仲睦まじい二人を見ていられなくて私は逃げてしまった。

大好きなこーちゃんが結婚するのが嫌で。
そのことを受け入れられなくて。

結婚なんてしないで。ずっと私だけのこーちゃんでいて欲しいなんて、子どもみたいなことを思ってしまっていた。

だから私は、今まで一度だってこーちゃんの幸せを考えたことなんてなかった。


私も……本当にこーちゃんのことが好きなら、こーちゃんの幸せをまず一番に願わないといけなかったのに。

< 24 / 32 >

この作品をシェア

pagetop