だから聖女はいなくなった
 一度にチョコレートを食べ過ぎてしまったようだ。喉の奥が焼けつける感じがして、紅茶で流し込む。

「疲れただろう?」

 キンバリーは声をかけつつ、やわらかな眼差しでサディアスの様子を見つめていた。以前よりも表情は穏やかになった。それでも、目の下には隈ができているし、頬もこけた。

「ですが、僕が好きで調べていますので」
「そうか……」

 そう言って目を伏せる様子も憂いを含んでいる。

「アイニス様の様子はいかがですか?」

 彼女は、なんとか三日に一度の聖女の務めに神殿まで足を運んでいる。行きたくない、気が重いと言いながらも、行っているだけ褒めるべき行為だろう。

「変わりはない。やるべきことはやろうとしている。そういった努力している点は、認めてもいいだろうと思っている」
「さようですか……」

 近くにいればいるほど、情が沸いてくるものだ。キンバリーがアイニスに向けている気持ちは、愛なのだろうか。

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